AMD A10-7800 の省電力性能を垣間見たりしたレビュー

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はじめに

 今回は A10-7850K 以来の APU である A10-7800 を用い、より「省電力性」を求めた形にしてみようと思う。
 A10-7850K と A10-7800 では CPU 部にのみ差異があり、それぞれ定格クロックが 3.7GHz と 3.5GHz、ターボ時では 4.0GHz と 3.9GHz と言う様に動作クロックを落とすことで TDP が 95W から 65W に低下するバリエーションモデル。発熱量が抑えられていると言う事は、その分消費される電力が少ない事を示す。
 APU と言う物は基本的に 1 つのプロセッサーで CPU に GPU をも入れ込んだ物。APU が登場する以前であれば「オンボードグラフィックス」などと表現されていた部類であり、あくまで「画面が表示される程度」レベルの性能にしかなり得なかった。しかし、それ以上の性能を持つグラフィックス機能を持つもまた APU の特長となる。更には、GPU が得意な演算は GPU に任せてしまう GPGPU (1) と言った技術や HSA (2) と言った物も APU の登場により扱いやすい環境になりつつ有る。
 そこで本記事では A10-7800 の性能がどんな物なのかを探りつつ、万人向けではないが便利な使い方も紹介して行こうと思う。自作はある程度、情報となる物があった方がより楽しくなると思うので、少しでもその足しになればこれ幸い。

*1 : GPGPU は General Purpose computing on Graphics Processing Units の略。GPU を用いて汎用演算を行う事。
*2 : HSA は Heterogeneous System Architecture の略。CPU と GPU を垣根無く用いる思想

パッケージと内容物の確認

 外箱はホワイトを基調に赤いラインの入った物が採用される。
 尚、外箱の QR コードを読み取ると APU 毎にある一意のコードを読み取ることが可能である。別に気にすることも無いポイントなのだが、一応画像処理を入れさせて頂いた。
A10-7800 BOX Q-View
A10-7800 BOX
A10-7800 BOX TOP
A10-7800 Contents
 内容物としては、APU A10-7800 本体にエンブレムシール、CPU クーラーが付属する。CPU クーラーはこの付属品でも動作上の問題は無いのだが、今回は他社別売品を取り付けて使用する事にする。これは PC を自作する際の個人的ポリシーな何かである。

 参考 : A10-7850K(左) と A10-7800(右) のパッケージの違い
7850 & 7800

A10-7800 のスペック

01_specs
 一応、上位モデルの A10-7850K も入れ込んだ表にした。主な差異は CPU の動作クロックとTDP に最大動作温度。この最大動作温度とは TjMax と言われるものであり、CPU コア温度を表す。
 また、CPU は 4 コア iGPU (*3) は 8 コアなので、合わせて 12 コアと言う表現も可能である。実際にその様な記載も外箱にはある。

*3 : iGPU とは intergrated Graphics Processing Units の略で内蔵 GPU の事を示す。外付け GPU は同様の表記で dGPU (discrete GPU) とも言う。

今回の自作 PC スペック

 用途は 24 時間 365 日稼働のサブ PC とする。常時稼働なので省電力であるほうが当然家計に優しい。
 ハイスペックである必要も無く、偶に動かす MMORPG 等のゲームも動けば良い程度。主には EARTHSOFT PT2 を用いた TV 視聴及び予約録画、そして Handbrake を用いて録画したファイルを x264 エンコードする事となる。

CPU : AMD A10-7800
CPU Cooler : Scythe 阿修羅
M/B : Gigabyte GA-F2A88X-UP4 (BIOS Ver.F5)
Memory : AMD AP38G1869U2K 4GBx2 (OC to DDR3-2133)
SSD : CSSD-S6M64NMQ (C300 OEM 64GB)
SSD : Intel X25-V 40GB
HDD : WesternDigital WD10EARL (1TB)
HDD : WesternDigital WD20EZRX (2TB)
ODD : LITEON iHAS324-27
Sound : ASUS Xonar DGX
Tuner : EARTHSOFT PT2 Rev.2
PSU : Antec EA-550 Platinum
Case : Antec ThreeHundred Two AB
OS : Microsoft Windows8.1 Pro x64

 昔から使い回しているパーツも多いので SSD 等は数世代も前の物になる。流用する事でコストを押さえることが出来るのも自作の醍醐味である。

APU を組み込む

 今回は A10-7850K からのダウングレードと言う形で A10-7800 に載せ替える作業のみとなる。ここ最近、さほどパワーを要する使い方を殆ど行わないので、A10-7850K は定格で用いる状態だった。OC 等しないのであれば A10-7800 で充分であろう算段である。

 使用して居るマザーボードは GA-F2A88X-UP4 で BIOS を現時点で最新の F5 としてある。色合いも AMD カラーぽくブラックとレッドで統一感があって良い。
mount1
 CPU クーラーは標準品ではなく Scythe 阿修羅を用いた。APU に対してはオーバースペックなクーラーだ。
mount2

使用感とベンチマーク

 PC のパフォーマンスを計測して数値化、視覚的に把握する為に 3DMark を用いる。DirectX 9~10 相当及び DirectX 11 に対応したグラフィックス描画が主体のベンチマークではあるが、Physics と言う項目では CPU による演算を用いたテストが行われるのでこの項目を見ることで CPU の演算性能を計り知る事も可能だ。
 トータルのスコアで PC のトータル性能、Graphics で GPU 性能Physics で CPU 性能を見る事が出来るからお手軽でも有り、デファクトスタンダード的なベンチマークである為にサンプルも多く手堅い。
 計測した結果のデータと考察を以下に示す。尚、比較用に A10-7850K のスコアも計測を行ったが、cTDP (*4) 65W 若しくは 45W 動作時だと FireStrike 実行時にフリーズしてしまう現象に陥った為、該当箇所のスコアは未記載としているので予めご了承頂きたい。
 尚、使用したドライバである Catalyst のバージョンは 14.7 RC1 を用いた。

*4 : cTDP とは configured TDP の略で、対応するマザーボードであれば APU の TDP を変更する事が出来る。TDP を下げると言う事は即ち発熱量の制限値が下がるので、消費電力も同時に低下する。

Ice Storm

 DirectX 9 相当の動作で描写されるグラフィックスによりベンチマークを行う項目である。比較的軽いグラフィック描写が行われるし、さほど GPU の性能を求める物でもないから充分快適なスコアをたたき出してくれた。
 今も尚、MMORPG 等では幅広く用いられているので個人的には Ice Storm のスコアを気にかけるようにしている。最新のハイエンド GPU に載せ替えても DirectX 11 のスコア (Fire Strike や Sky Diver) ほど素直に大きく伸びてくれない項目でもあったりする。
3dm_ice_storm

Cloud Gate

 DirectX 10 相当の機能を用いたベンチマークになる。DirectX 10 が最新だった時代では対応タイトルが多かった気もするが、ここ最近ではあまり見かけないような気もする。同ベンチ同士での性能比較にはなる。DirectX 9 よりも高度なグラフィックス描画を行えるので GPU に帯する負荷も若干上がってくる。
3dm_cloud_gate

Sky Diver

 2014/06/11 に発表された 3DMark 1.3.708 から追加された項目。DirectX 11 を用いたベンチマークではあるが、ノート PC や高性能ではないミドルクラスをターゲットにした物になるので、後述する Fire Strike よりも軽量にはなる。
Sky Diver

Fire Strike

 3DMark の中では最重量な負荷のかかるベンチマーク。DirectX 11 の機能をフルに使うだけあって、描写されるグラフィックスは繊細で綺麗である。主にゲームでは最新の FPS 系タイトルで採用される事が多く、一般的な GPU も DirectX 11 をターゲットとして性能を上げてきている事が多い。
 APU としてはこの項目は余り気にせず、DirectX 11 を用いたタイトルをプレイするのであれば Sky Diver の項を参考にした方が良いかも知れない。
 尚、A10-7850K にて cTDP を有効化した際にフリーズしてしまう現象を解消出来なかったので、該当箇所のスコアは無しにさせて頂いた。環境を変えた際に OS を入れ直したりしていない為と思われる。
3dm_fire_strike

3DMark 実行毎の消費電力を動作モード毎に比較

 A10-7850K, A10-7800 の両者に於いて、cTDP を変えたシチュエーション毎の消費電力を計測した。ワットチェッカーはサンワサプライ TAP-TST8 を用い、3DMark 実行中に目視にて最小値と最大値を拾った値をグラフ化した物である。
 尚、SSD 2 台 HDD 2 台に加え TV チューナーカードやサウンドカードも載っている分、消費電力はそれなりになっているので予めご了承頂きたい。SSD 1 台のみの最小構成にすれば消費電力としては 10W 程低下する計算にはなる。
 参考までに、何も操作していない IDLE 時では A10-7850K で 46W 前後、A10-7800 では 44W 前後に落ち着いていた。
Watt
 ベンチマーク結果を踏まえると、A10-7850K で cTDP を前提とした使い方をするのであれば A10-7800 を選んだ方がパフォーマンス的にも上になると分かった。平均的に見ると A10-7800 の方が消費電力は下であるが、ベンチマークスコアは上である為だ。
 消費電力の計測に於いては全てのケースで Sky Diver の Combined テストがもっとも高い値を示した為、スコアの取れなかった Fire Strike の項は影響なしとして判断している。

3DMark でみる A10-7800 の考察

 A10-7850K のスコアも入れ込むことで A10-7800 の良さが際立ってくれた。A10-7850K で cTDP 65W とした物と A10-7800 を比較すると、消費電力こそ同じであるにも関わらず、スコア自体は A10-7850K 標準の 95W 動作時に肉薄している事が見て取れる。
 更に A10-7800 で cTDP 45W としてもスコアは A10-7850K cTDP 65W に肉薄しているのである。よって、ワットパフォーマンスは A10-7850K よりも A10-7800 の方が上となる結果となったので驚いた。
 これは TDP 45W や 65W に「より最適化」した結果かなと見て取れる。こうなると A10-7850K は Core Unlock モデルなので定格ではなくオーバークロックをして用いるべきなのかなとも思った。自身としてはサブマシンで用いるので省電力指向になる為、使うべき APU としては A10-7800 が現状ではベストであると判断した。

TV 視聴時の画質を綺麗にする使い方

 APU で用いるドライバーである Catalyst は標準でビデオの再生品質をコントロールする事が可能だ。処理には GPU による支援も効いているので、デノイズやブロック解除などの処理をリアルタイムに行った所で CPU のパワーを必要としない。よって、負荷を気にせず高画質に動画を再生する事が可能となる。
 今回 APU を入れ替えたマシンは EARTHSOFT PT2 と言う TV チューナーカードを導入してあり、視聴ソフトは TVTest を用いている。通常の方法ではドライバーが用意した動画デコーダーである「AMD Video Decoder」を TVTest 側から利用することが不可能なので、少し特殊な値を変更してやる必要があるのだが・・・・・・
 詳しくは次に示す当ブログの過去記事に記載してあるので、興味のある方は参考にして頂ければと思う。
 AMD Video Decorder を用いた TVTest による画質の良い TV 視聴
 この記事からそのまま効果を比較した画像と転載するとこのようになる。

左 : フィルタ無効 / 右 : フィルタ有効

左 : フィルタ無効 / 右 : フィルタ有効


 アンチエイリアス処理が強力で、曲線がガタガタであってもリアルタイムで滑らかに補正してくれるから一般的な液晶 TV で番組を見るよりも「より綺麗」に視聴することが可能。
 そして SD 画質の放送では効果がより顕著になる。(ここ最近では SD 画質の放送は見かけなくなったが・・・・・・)
左 : フィルタ無効 / 右 : フィルタ有効

左 : フィルタ無効 / 右 : フィルタ有効

 動画のデコーダーを変更してやる手間がかかるが、これだけ簡単に画質を弄れて効果的な物は知る限りだと AMD Catalyst を用いる APU、若しくは Radeon 以外には知らない。少なくとも GeForce 系では自身が知らないだけなのかも知れないが不可能だった。
 また、ここで紹介した再生品質のコントロールは特に何もせずとも Windows Media Player では有効化されるので、動画再生においても簡単便利に画質補正を行うことが可能だ。結構強力に効いてくれるので、補正の強さなどのパラメータは自分好みにカスタマイズした方が良いかもしれないが。

おわりに

 「APU らしさを生かしたい」と思っているうちに行き着いた先は今回の TDP65W モデルである A10-7800 となった。
 個人的なサブマシンとしてのコンセプトは次の通りに定めているが、これを満たす事が可能であった為だ。

  • CPU の演算性能はハイエンドである必要は無い。
  • 欲を言えば軽いゲームも動くレベルの GPU もあると良い。
  • 24-365 で動かして居る自作マシンなので省電力である方が良い。

 自作 PC で有るが故、自分の使い方に合致した構成を考え、考えた通り若しくはそれ以上に出来ると楽しい事この上無い。勿論、自作 PC が完成した後に、後付けでコンセプトを盛り込む事も愛着が湧くので充分にアリである。
 APU のモデルとしても、もう少し CPU の演算性能が欲しく消費電力が上がっても良いのであれば A10-7850K と言う選択肢もあるし、性能をもっと下げつつも消費電力を下げたいのであれば cTDP 機能を用いて TDP 45W による運用も可能だ。
 「幅広いニーズに適合する」と、個人的には考えるのがこの APU になると感じた。

著者プロフィール
ぶっち

本格的に PC へ触れ始めてたのは 1990 年位から。
興味は PC 全般。OS は Windows と Linux などを嗜む。
プログラマやネットワークエンジニアを経てフリーに活動している 2 児の父な 40 代半ばのおじさんです。

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コメント

  1. 素晴らしいぞ!

  2. おもしろい。

  3. コメントありがとうございました!
    今後も細々と何かを伝えていけたらと思います。

  4. 私もこのAPUを使っています。2133MHzのメモリーを使用し、BIOSに2133MHzをあてましたが
    フリーズ多発で参っていました。

    死苦八苦したのちメモリー周波数を一段下(1866MHz)にて運用すると見違えるように安定しました。

    CHINEBENCHの結果はイマイチですが(scoreが293…w)
    愛着が出てきました。

    • コメントどうもです!
       APU は DDR3-2133 以上に対応するようになってから、結構相性がシビアになるような雰囲気がありますねorz
       個人的には A10-7850K などの Kaveri になってから A-DATA との相性が最悪で、2133 メモリであっても 1333 駆動すらエラーが出てまともに動かないと言う事を経験していますし、周囲の人でも同じ現象を見かけたりしています。

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