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6 月にやっと Ryzen 5 1600 ベースに Ryzen 環境に移行できた。
当初は OC とかしなくたって FX-8350 と比べれば演算性能は遙かに上だし省電力だし定格で十分だろうなんて思ってはいた物の、ちょっと弄くったら性能の伸びは良いし FX-8350 に比べれば OC しても消費電力なんて可愛い物だしなんか面白いなと嵌まってしまった。おかげでマザーボードまで買い換えるハメになってしまったが……。
お約束
本記事を参考にしたのに壊れたと言っても損害に対する保証は一切無いのでご了承を。
検証動機
Ryzen 5 1600 の OC に関してはデフォルトの Vcore 1.2375V で動作する周波数上限が 3.6GHz だったので、先ずは 3.6GHz スタートで Vcore の下限を探って詰めていく作業を行い、最終的に個人的ポリシーである Vcore 1.4V 以下で動作する上限のクロック 3.8GHz@1.3500V まで行き着いた。
この辺の探り方は別途記事にしてあるので、気になる方は参照されたい。
OC 時、ワットパフォーマンスで一番バランスの取れた 3.6GHz@1.2000V で日々快適に常用をしていた物の、ネット界隈で OC 情報を調べているとどうも X 付きモデルや Ryzen 7 シリーズの方が我が家の Ryzen 5 1600 よりも低い Vcore で安定していると言う。
ただ、何を以て安定と言うのかは人それぞれ千差万別であるから筆者が個人的にこれをクリアしたら安定だと定めるストレステストを以て上位である Ryzen 7 シリーズを OC して設定を詰めたらどうなるのかと気になり出して検証してみたいなと強く思うようになった。
更に付け加えるなら、同じウェハから採れたチップで良質な物ほど Ryzen の上位モデルに採用され、選別落ちした物が下位モデルに向けて採用されるという流れも読み取れるかなと思ったので個人的に実証して納得してみたいとも思った次第。
OC 比較検証
検証環境
CPU | AMD Ryzen 5 1600 or Ryzen 7 1700 |
---|---|
CPU-Cooler | Corsair H100i |
M/B | MSI X370 GAMING PRO CARBON (BIOS 1.82) |
Memory | CFD W4U2400CM-8G OC@2933 |
SSD | CFD CSSD-S6T128NHG6Q (TOSHIBA) |
SSD | WesternDigital WD Blue SSD (1TB) |
HDD | WesternDigital WD10EFRX (WD Red 1TB) |
VGA | Sapphire NITRO+ RX470 4GD5 |
Sound | OnBoard |
PSU | Corsair CMPSU-850AX (850W GOLD) |
Case | Corsair Obsidian 550D |
OS | Microsoft Windows10 Pro x64 |
やること
上記の通り Ryzen 5 1600 と Ryzen 7 シリーズで 3.6Hz から 100MHz 刻みで 3.8GHz までの安定動作が行える Vcore の下限を探って比較を行うこととした。
比較する Ryzen 7 のモデルは 1700。こちらは日本 AMD より「オーバークロックをした比較検証をしたい」と伝えたところご提供頂いた個体となる。
OC 方法
Ryzen 7 1700 に関しても Ryzen 5 1600 と同様に定格の Vcore で動作する上限クロックを探し出し、次にそのクロックで動作する Vcore の下限を探るというステップになる。そこから動作クロックを 100MHz ずつ上げて行き Vcore 1.4000V を超えない範囲で安定するクロックの上限も探る感じに割と安全策な方法をとっている。
ストレステストのやり方
筆者個人が安定動作すると判断するストレステストは IntelBurnTest という CPU とメモリに通常あり得ない高負荷をかけるソフトのプリセット VeryHigh をエラー無しで完走する事としている。
不安定であれば 10 回行われる演算結果に相違が出てエラーが出たり、マシンがプトゥーンとブラックアウトして落ちる。余りにも負荷が高いことから、無理な事をしていると最悪 CPU やメモリを破損する恐れさえある物なので実行するには自己責任の上、OC 設定や冷却面に十分注意をした上で使わなければならないソフトだ。
検証結果
そしてその方法で割り出した Ryzen 5 1600 と Ryzen 7 1700 の動作クロックと Vcore の関係をグラフ化した物が次の様になる。
検証中に直ぐこれは個体差こそあるだろうけど、それにしても耐性が全然違うと感じていた。グラフ化する事により顕著で視覚的に分かりやすく現れてきた。
Ryzen 5 1600 と同一クロックであっても Ryzen 7 1700 なら 0.05~0.075V も低く安定してしまう。つまり Ryzen 5 1600 よりも Ryzen 7 1700 の方が OC 耐性が高いという結果になる。
Ryzen 5 1600 では成し得なかった 3.9GHz 安定動作も Vcore 1.4000V 以下で実現出来ているところも凄いと感じたポイントだ。
比較結果
同じクロックであっても動作に必要な電圧が低く済むということは、消費電力面に於いても優位に立てる。
Ryzen 7 の方が 2 つほど物理コアが多いのでその分の電力増加は免れないだろうと思っていたのだが、実のところは大幅に上昇するわけでも無く微増で済むなんて結果になって驚いた。
過去に掲載したグラフより Ryzen 5 1600 の消費電力データを再掲載すると次の通り。
次に Ryzen 7 1700 のデータだが、これは本来 Ryzen 7 1700 単体のレビュー用としてまとめたグラフだから Ryzen 5 1600 との比較がし辛いだろうけど 3.6GHz のデータで見比べて頂ければなと思う。
Ryzen 5 1600 と Ryzen 7 1700 の両者 3.6GHz 部分の消費電力をそれぞれ見て行くと、FireStrike Extreme では 1700 が +3W、Prime95 では ±0、HEVC エンコで +5W と Ryzen 7 1700 の方が消費電力が高い結果になっている。
しかし、動作している物理コアが 2 つ多いにもかかわらず、誤差レベルでしか電力が増加していない点には驚くばかりだし、これが Ryzen 5 と Ryzen 7 というモデルの大きな差別化になっているのかなとも感じた。
ただ IntelBurnTest といった CPU が消費しうる電力を最大限に引き出すようなソフトを実行すると流石にコアが増えた分だけの電力増加は現れてしまうので、一概に誤差レベルで近い消費電力とも言い切れない点だけは注意である。
その他気付いたこと等
OC 設定で動作クロックと Vcore を探っているとき、Ryzen 5 1600 では Vcore が足りない時は負荷をかけた瞬間にマシンがブラックアウトしていたが、Ryzen 7 1700 ではあまりブラックアウトが発生せずに IntelBurnTest がエラーを吐いて演算を停止させるという挙動の違いが見られた。
何故そう言った違いが出るのか良く分からないが、結果としてブラックアウトしない分だけ設定を詰めていく作業が割とスムーズに進めることが出来た。
ブラックアウトし辛いというだけで、しないわけではないから高クロック状態に挑戦する際には何度も発生させてしまった。その弊害からか Windows10 の動作におかしな点がいくつか出てきたりしてクリーンインストールをやり直すハメにもなった。
気付かない所でどこかの何かが不具合を起こしている可能性というのもこの様に十分あり得るので、OC する際には細かい挙動などにも気に留めておこう。
Ryzen 7 1700 で 4.0GHz チャレンジ
1.4000V 以上の電圧をかける事は個人的にもの凄く好まない事なんだけども、4.0GHz で CINEBENCH R15 を一度やってみたいと思ったのでちょっと挑戦してみた。
結果として CINEBENCH を完走出来た Vcore は 1.45V に達した。勿論この電圧でストレステストをするのも危険だなと思ったのでそこはやらずに CINEBENCH 完走で満足し、直ぐにクロックを落としてから Vcore も戻した。
もう少しで i7-6950X の定格を倒せるところだったがこれ以上の OC は流石にヤバい……。素直に辞めておく事が賢明かなと。
おわりに
Ryzen 5 1600 と Ryzen 7 1700 の 2 つの CPU を使って見た感じだと Ryzen 7 1700 は当然ではあるが完全に上に立つモデルとして性能は勿論、ワットパフォーマンスに於いても絶対的な物を持っている。
これは筆者が特に消費電力面を気にするタイプの人間なので、そう大差でない消費電力であるにも関わらずマルチスレッド性能に於いては純粋にスレッド数の差分 1.3~1.4 倍の性能を示すからだ。
反面、シングルスレッドの処理性能に於いては同一クロックであれば全く同じ性能になるので、多コアに最適化されていないゲームタイトルなどではそう大きな差にはならない。
こう言った面に於いてはイニシャルコストの落とし所として Ryzen 5 1600 を選択するにも十分な理由となる。
これだけごちゃごちゃと書いてきて言うのも何だけど、最もワットパフォーマンスが優れているのは定格動作 (( ダウンクロックを除く )) になるので、確固たる OC 目的が無い場合は無理に行う必要もない。それだけ Ryzen は内部の制御が優れているのであろうとも言えるポイントだ。
また後日 Ryzen 7 1700 単体のレビュー記事を掲載する予定なので、そちらで細かい事は書いていこうかと思う。
コメント
お久しぶりです。
以前にRyzen5を買われた後に結局Ryzen7も買われたんですね。
私なんかはFM1のCPUでいいや、買うならRyzenのAPU待ちとか思ってましたのに。
ただ、今では会社でVR用のパソコンを購入してから、
これは凄い!仕事とは無関係にVR使ってみたい(動画にゲーム)とか思ってまして、
Ryzen5やRyzen7の購入に心揺れ動いていますw
そんな中、OC耐性の比較は見たことがなかったので非常に参考になりました。
以前のAMD FX 8350との比較を見る限りでは、
Ryzenの1600で十分満足。
今回の結果を見て、
今後、より高解像度のヘッドセットが出たときのためにOCの余剰分(性能向上)を
と考えるならコア数も多いRyzen7のほうがいい感じのようですね。
今後もレビューを楽しみにしています。
お久しぶりです。いつもコメントありがとうございます。
正直 Ryzen 5 1600 でも性能を持て余す感じがあったのですが、OC の伸びしろと耐性を見る限りは Ryzen 7 1700 の方がやはり上位モデルだけあって結構楽しめました。
日常的なブラウジングや表計算などでは中々コア数が活きる場面も少なく、Ryzen 5 1600 も Ryzen 7 1700 も差がない様に思えますが、重い処理をさせると当然ながら差が出てくるのでやはりコア数は多い方がいいですし、OC の伸びも良い 1700 がベストかなと思っています。
なにより 1800X などのより上位モデルでも OC の頭打ちとなるクロックは同程度だそうなので 1700 のコスパが光るところかと思われます。
あとは Ryzen 7 1700 単品のレビューが残っているので頑張って書いていこうかと思います (笑
はじめまして。教えて頂きたいのですが消費電力やベンチマーク結果のグラフは、エクセルで作成しているのでしょうか。それとも専用のソフトで作成しているのでしょうか。
こちらのグラフは全て Excel で作成した物になります。
プリセットのデザインを適用した上で目盛り線や軸など細かい所を多少いじってあります。
回答ありがとうございました。