COMPUTEX 2019 で発表された Ryzen™ 3000 Series に関する情報を振り返る

PCPickup
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はじめに

 去る 2019/05/27 に行われた COMPUTEX 2019 で AMD CEO, Lisa su 氏による基調講演が行われ、その内容に大いに盛り上がった。
 内容は勿論 Ryzen™ 3000 Series に関するものだ。
 CES の時よりも更に突っ込んだスペックやパフォーマンス、メーカー希望小売価格には驚かされる物ばかりでエンドユーザーとしてもかつてない期待を持てる内容だった。

 今回は Lisa su 氏の背後の大型ディスプレイに表示されていたスライドデータを日本 AMD よりご提供頂いたので、より見やすい画像を元に COMPUTEX 2019 で発表のあった Ryzen™ 3000 Series に関する情報を振り返ってみたいと思う。

Zen2 コアアーキテクチャの特長

 3rd Gen AMD Ryzen™ CPUs つまり Zen2 コアアーキテクチャはプロセスルールが 7nm となりソケットは初代から変わらず Socket AM4 を採用。世界初の PCIe® 4.0 対応 PC プラットフォームになる。

 Zen2 コアアーキテクチャを採用した Ryzen™ 3000 シリーズでは Zen+ コアアーキテクチャと比較すると IPC (( Instruction Per Cycle = 1 サイクルあたりに実行可能命令数 )) が最大 15% 向上、キャッシュサイズは 2 倍、浮動小数点演算が最大 2 倍へと飛躍的に向上した。
 Zen+ までは浮動小数点の演算ユニットが 128bit であった為、256bit の AVX2 命令等は 128bit に分割して処理されていた。これが Zen2 では演算ユニットが 256bit となった為、分割するというボトルネックが解消されるので大幅な速度向上となる。

Ryzen™ 7 3700X

 先ず始めに正式な型番とスペックが公開となったのが Ryzen™ 7 3700X。
 もしかしたら 3700X から 12C24T と期待していた部分もあるが、その実 8C16T と前世代のと同様だった。
 スペックをローンチ時に全く同じ希望小売価格だった 2700X と比較すると次の様になる。

 今回は 700 番台のモデルが最上位という訳では無い為かベースクロックが 100MHz 下がっている。
 しかしブーストクロックが 100MHz 上昇、L2+L3 キャッシュの合計が 20MB から 36MB (( キャッシュ構成は恐らく L2 512KB x8 + L3 32MB。 )) へとかなり増量されつつも TDP が 40W も下げられている。
 この辺りは 7nm というプロセスルールが色濃く出た部分なのだろうと思われる。

 この Ryzen™ 7 3700X のパフォーマンス比較対象としては Intel Core i7-9700K がターゲットにされている。
 見ての通り Cinebench R20 によるベンチマークでは全てに於いて Ryzen™ 7 3700X が上回った結果をだしたようだ。それでいて TDP も 30W 低いと示されている。
 なによりシングルスレッドの処理性能は、もう長いこと Intel にあと一歩及ばなかったが Zen2 コアアーキテクチャを以て追いつき、僅かながらにも追い越した形となった。

Ryzen™ 7 3800X

 Zen2 コアアーキテクチャの Ryzen™ 7 シリーズ最上位 3800X は初代 1800X と同様に 800 番台が最上位に位置する。
 TDP こそ前世代 2700X と同じ 105W とはなっているものの、ベースクロックとブーストクロック共に +200MHz の伸びを見せてくれた。

 パフォーマンス比較は同 TDP となる Ryzen™ 7 2700X を対象に示された。
 ゲームタイトルによっては最大で 34% のパフォーマンス向上が認められた形となっている。最低でも 11% の向上となっているようでこのくらいの向上率でも体感差があるのではと思われる。
 尚、このパフォーマンス比較に於ける具体的なハードウェア環境は示されていない物の、2019/05/26 に AMD Performance Labs で計測されたものであると脚注に書かれていたので、ゲームタイトルもデバイスドライバも比較的最近の物を用いられていると予想される。

Ryzen™ 9 3900X

 結局「最上位は 8C16T なのか~」と発表を見ていたが、満を持して登場したのがこの Ryzen™ 9 3900X。
 Ryzen™ 9 シリーズは今までにないナンバリング。
 CG を見ての通り、CES 2019 で提示されたサンプルでは空いていたパターンにもチップレット (( 今まで CCX と言われていた物と同様に Zen2 からは最大 8C16T からなるダイをチップレットと呼ぶ。中の構成は不明。 )) が載せられている。

 チップレットが 2 つ載ったことによりコア数は 12、スレッド数 24 に及ぶ。各チップレットから 2 コアずつ潰した 6C12T を 2 つということになる。
 これに伴い L2 512KB x6 + L3 32MB が 2 チップレットで 70MB と結構な容量となっている。
 動作クロックを見るとベースクロックこそ 3800X より低く設定されているが、ブーストクロックは現状判明している Ryzen™ 3000 Series 最高の 4.6GHz。
 これだけのコア数とクロックを確保しつつ TDP は 3700X と同じ 105W に収められている。
 Ryzen™ は初代から SenseMI といった技術によるクロック制御が非常に優秀なので、各 P-State の動作をきめ細かく設定する事により更に上手く、効率的に TDP を設定枠内へ収められるよう調整されている物と思われる。

 パフォーマンス比較の対象は Intel Core i9-9920X で現行ハイエンドモデルで 3900X と同じ 12C24T の製品になる。
 後述するが 3900X の希望小売価格 $499 に対して i9-9920X は $1,189 なので約 42% の値段で上記データのように “TDP の高さ以外” すべて 3900X のグラフが長い。
 一般的なエンドユーザーが手を出しづらいハイエンドモデル以上のスペックを頑張れば手の届きやすい位置にまで下ろしてくる辺り AMD らしさという物が垣間見えた。初代 ThreadRipper も然り―― で。

 そして初代 Ryzen™ 7 最上位モデル 1800X と今回発表時に於ける最上位 3900X のパフォーマンス比較を Cinebench R20 を用いて行うと「更にここまで成長しました!」という大きな伸び幅が見える結果が出ている。

気になる希望小売価格

 この値段設定にはピンと来る物がある。
 初代 Ryzen™ シリーズローンチ時と全く同じ設定になっているのである。
 Ryzen™ 7 1800X $499、Ryzen™ 7 1700X $399、Ryzen™ 7 1700 $329 となっていた。
 当時のドル円レートは $1=¥114、本記事執筆時の 2019/05/29 現在は約 109 円前後なので、相場と代理店次第だが初代 Ryzen™ 上位モデル登場時よりも買いやすい値段になってくれれば良いなと思う感じで計算できるかも。

気になる発売日

 COMPUTEX にて発表された 3 モデルは 2019/07/07 に発売されると正式に発表された。
 もしかしたら前日夜半からカウントダウン販売なんて大々的に行われ、大盛況になる可能性も大。
 お目当てのモデルを希望小売価格から日本国内では幾らくらいになるか予想してある程度予算の確保に走っておいた方がいいのかも。

おわりに

 COMPUTEX 2019 にて行われた AMD CEO の Lisa su 氏による登壇を待ちわび、YouTube 上で Live 配信されていたものをスマホのリアルタイム翻訳を使いながらでも楽しむことが出来た。
 Zen から Zen+ への進化よりも Zen+ から Zen2 へコアアーキテクチャが進化した今回の方が感銘を受けた。期待以上の物があるだろうなと。
 筆者自身は初代 Ryzen™ 7 1700X を使い続けているが予算上、なんとかして本年中に手に入れられたらいいなと思うばかりである。

著者プロフィール
ぶっち

本格的に PC へ触れ始めてたのは 1990 年位から。
興味は PC 全般。OS は Windows と Linux などを嗜む。
プログラマやネットワークエンジニアを経てフリーに活動している 40 代も後半に入ったおじさんです。

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