AMD Ryzen™ 9 3900X Review

Review
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はじめに

 手持ちのお小遣いに余裕があったので、気が触れて Ryzen 7 3700X からの乗り換えで Ryzen 9 3900X へとアップグレードを果たした。
 正直このアップグレードを行うにあたっては「本当に自分にとってそこまでの性能が必要なのかどうか」と自問自答したものである。がしかし、悩むなら行っておけと言う事でポチってしまった次第。

 データの残っている物に限り Ryzen 7 1700X と Ryzen 7 3700X のデータを交えつつ、ベンチマーク結果をまとめたので使用感なども含めて書いてみたいと思う。

Ryzen™ 9 3900X のスペック

 3900X はベースクロック 3.8GHz、ブーストクロック 4.6GHz となっている。3700X 比でベース/ブーストクロック共に +200MHz されつつも 12 コア 24 スレッドというスペックになっている。TDP もクロックやコア数増加に伴う形で 105W に。
 TDP から見て取れるように性能を出し切るには冷却にも気を使いたい所。今回は CPU のアップグレードに際して簡易水冷を 240mm ラジエータ採用の Corsair H100i から 360mm ラジエータな Corsair H150i PRO RGB へと交換も行っている。

 3900X は Ryzen™ 3000 シリーズの中でもシングル性能、マルチ性能のバランスが非常に良い多コアでコスパの良いハイエンド CPU になっている所感が強い。

パッケージと内容物

 Ryzen™ 9 シリーズはパッケージが厚紙になっており堅固。すこしデザインが変わっている部分もある。

 蓋を持ち上げて中身を確認すると直ぐそこに CPU が収まっていた。ちょっと勿体なくてエンブレムシールを使うのを躊躇っている。マグネットシートに貼ってカットすれば使い回しが効くのだが取り敢えず保留中。

 付属の CPU クーラーは Wraith Prism となっている。
 これで 3900X の性能を出し切れるのかはちょっと分からないが、ヒートパイプ 4 本に LED 装備で見た目も良く、人気のあるクーラーだったりもする。
 筆者は付属クーラーを使わない主義の人間なので、このまま箱にしまっておくこととする。

ベンチマークを行ったマシンのスペック

 この後掲載するベンチマーク結果を出したマシンのスペックは以下の通り。

 加えて色々とチューニング済みという事になっているので参考程度にというお話しになってしまうかもしれないがご了承を。
 チューニングしたポイントは CPU の動作電圧 (Vcore) を -0.100V ほど Offset 調整していること。加えてメモリの CL 値などのタイミングもサブタイミングまで全てギリギリまで詰めている事も挙げられる。
 つまり限界まで性能を出し切れるように弄ってあるという事で。まだチューニング出来る部分 (LLC とかそのあたり) は残っているが、現状で満足しているのでこれ以上は弄らない。

比較対象のマシンスペック

 データとして入れ込んでいる Ryzen 7 3700X 使用時のマシンスペックは以下の通り。
 メモリの動作に関しては DDR4-3733 とし、サブタイミングはある程度詰めた状態時の物となる。

 同様に Ryzen 7 1700X 使用時のマシンスペックは以下の通りとなる。
 メモリの動作は XMP を読み込んだのみ。

各種ベンチマーク結果と考察

3DMark

 DirectX 11 ベースの API で描写されるグラフィック性能を測る項目。
 Physics の項目は CPU のみの演算により 3D を描写しているので、CPU 性能がそのままポイントに繋がる。
 使用している GPU である Radeon RX470 は Ryzen 7 3700X で既に性能を引き出し切れており、ブレの範囲で同等と見受けられる。

 次に TimeSpy。こちらは最新の DirectX 12 ベースの API。
 こちらも FireStrike と同じ様な傾向にあり、Graphics スコアは 3700X で既に頭打ち。伸びしろは CPU Test のスコアのみとなった。
 CPU Test はベース/ブーストクロックの増加分に加えてコア数上乗せでこのくらいの伸びとなった。

Cinebench R15/R20

 定番のレンダリングベンチ。CPU 性能がフルに物をいうベンチマークテストになるので、多コア多スレッドが当たり前な昨今の CPU では確実に用いられる物となってきた。

 先ずは Cinebench R15。
 Ryzen 7 3700X で 2,000cb を超えてきたと喜んでいたら 3900X は軽々と 3,000cb を超えてくる。恐ろしい物で。
 注目したいのは Single のスコア。ベースクロックが高い分、スコアが上がっている。

 次に Cinebench R20。こちらの方が処理がかなり重くなっているので時間もかかる。特に Single 計測時は左下のソファーと右の本棚が憎らしくもなる
 Multi のスコアは圧巻の 7,258cb にも及び、3700X 比 1.53 倍という結果が得られた。
 Single のスコアもクロック分の差が伸びていた。シングルスレッド性能が低めだった AMD の CPU にあるまじき―― という表現もおかしいが、目を疑うような性能向上を見せてくれた。嬉しい限りだ。

PassMark PerformanceTest 9.0

 PerformanceTest の中で CPU 性能の指標となる CPU MARK のスコアは以下の通り。

 メモリに関してもベンチマーク出来る様なので以下のように実行してみた。メモリはチューニング済みの物なので参考程度に…… ではあるが。

FinalFantasy XIV SHADOWBRINGERS Benchmark

 現状では最新となる FF XIV のベンチマークになるのかな。3700X のレビュー時にはもう一つ古いバージョンで計測してしまっていたので、今回は新しい奴にした。

 こちらは 3900X と 3700X の性能差は極小。恐らくメモリのレイテンシ差による物かなと思われる程度の差に収まっている。
 3700X から 3900X になることで CCD が 1 つから 2 つに増えた分、メモリ周りの速度/帯域が上がっている事がその理由と予想される。

発熱と消費電力

IntelBurnTest を用いたテスト

 IntelBurnTest というソフトは CPU 単体に非常に高い負荷を与えてくれる。筆者の知る限りでは手軽に得られる負荷のなかで最も高いものであるから良く使う一本である。

 IntelBurnTest のプリセット VeryHigh 10 周にて CPU 単体の負荷で消費しうる瞬間最大電力とその時の CPU 温度 (Tdie) を計測し、グラフ化したのが次のものになる。
 室温は全て 24 度のデータだったので、今回の計測も室温が 24 度の時を見計らって計測した。

 3900X のデータでは CPU クーラーが Corsair H100i ではなくて Corsair H150i PRO RGB へとアップグレードされている点に注意。ラジエータサイズが大きくなってるので、その分発熱を押さえ込めるようになっているので 3700X よりも低い温度を記録した。

 やはり TDP105W というだけあって伴う電力も立派な物になった。
 ただ、発熱に関しては 360mm ラジエータな簡易水冷に交換しただけあって、さほど気にする必要も無いレベルで収まってくれている点が嬉しい所。恐らく空冷でもハイエンドモデルなら十分に性能を引き出せる物と思われる。

シチュエーション別の消費電力

 上記 IntelBurnTest 実行時の結果も混ぜてしまっているが、それを普通の高負荷時と想定し、更に 3DMark FireStrike 実行時の瞬間最大消費電力も計測する事でゲームプレイ時に近いデータを取ってみた。

 3DMark の消費電力は搭載している GPU に左右される場合が多い点には要注意。ちなみに筆者使用の Sapphire Radeon RX470 は OC モデルで最大消費電力は 175W と表記されていたものとなる。
 IDLE 時消費電力は一瞬でも目視出来た最低値をグラフにしているので、IDLE 時平均を取るともう数 W ほど上になるかもしれない。ともあれ放っておけば 70W 以下で収まってくれるハイエンドである事には変わらず、電力効率もなかなかに良い感じであると思われる。

ワットパフォーマンスを簡易計算する

 IntelBurnTest で CPU 単体が消費しうる電力と想定したデータをだしたので、それを今度は Cinebench R15 の Multi なスコアを割って上げることでワットあたりの cb スコアを算出した。
 つまり 1W で何 cb のスコアを出せるのかというワットパフォーマンスが視覚化出来る…… と。

 3900X のフルロードした消費電力は 255W と 3700X 比で +72W となり、一見大きな差にも見えてしまうが、その実はワットパフォーマンスが最高値を示したという面白いデータが得られた。
 多スレッドをフルに活用する場面であれば 3700X よりも 3900X の方が性能的にも電力的にも優秀であると言う事になった。

使用感

 正直躊躇いもあった Ryzen 7 3700X から Ryzen 9 3900X へのアップグレードとなったが、当然というか損はしないアップグレードになった。
 ハード的な不満は一切ないがソフトウェア面では不満も若干あって、それが今回データとして載せなかった動画のエンコード関連にある。
 HEVC エンコードを行うときに用いる x265.exe Avisynth+ のフィルターの 1 つ (TDecimate) が 16 スレッドまでの分割までしかしていない雰囲気なので、Ryzen 7 3700X と比較してもベースクロック上昇とメモリ帯域の増えた分のみの速度向上にしかならなかった。その差約 2fps 程度…… と。
 その為、動画のエンコードに x264 や x265 を用いるのであれば 2 本並列エンコードを行うのが最も良いエンコード速度稼ぎになる。

 日常的な使い方をしている分だとアプリの起動が単体でサクサクするもんだから複数のアプリを一気に立ち上げても CPU を使いきる事がないので機敏に動作してくれる。
 処理的な物で最も速度差を感じたのが RAW 現像の速度。Adobe の Lightroom を使用しているが 10 枚程度の現像であれば殆ど待つ事なく jpg ファイルに仕上がってくれる。内心「あれ?」って思う事も未だにあるくらいに速い。

 動画エンコードや RAW 現像をより速くというユーザであればこの 3900X は予算次第でベストな CPU になるだろうと思う。
 というか筆者はこの 2 つ程度でしか 12 コア 24 スレッドというスペックを活かせないのでちょっと勿体ないなと考えていた次第。いまではアップグレードして良かったなとは思っているが。

おわりに

 遂に CPU のハイエンドモデルに手を出してしまったか… というのが印象としては大きい。この先も買い換えとなると同レベル以上でなくてはいけなくなるからだ……
 ともあれ 12 コア 24 スレッドというスペックでもシングルスレッド性能が高いもんだから必然的にマルチスレッド性能も抜群。言う事の無い CPU である事は間違い無い。
 冒頭にも書いた通り「Ryzen™ 3000 シリーズの中でもシングル性能、マルチ性能のバランスが非常に良い多コアでコスパの良いハイエンド CPU」というのがそのまま言いたい事なのかも知れない。
 更に上位の 3950X にも興味はある物の、流石に値段差をみてしまうと「ちょっと無理」。

  • 2020/02/24 — 「各種ベンチマーク結果と考察」に PassMark PerformanceTest 9.0 を追加
  • 2020/05/04 — 「使用感」で HEVC エンコード時に関する一文に打ち消し線を入れて修正
著者プロフィール
ぶっち

本格的に PC へ触れ始めてたのは 1990 年位から。
興味は PC 全般。OS は Windows と Linux などを嗜む。
プログラマやネットワークエンジニアを経てフリーに活動している 40 代も後半に入ったおじさんです。

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