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2017/06 に晴れて Ryzen 5 1600 にて Ryzen 環境に移行が出来、OC 等の各種検証を経てひとしきり堪能した後に OC 耐性への疑問が湧いた。「より上位の Ryzen 7 では耐性は高いのか」という疑問だ。
そこで先ず OC 耐性比較に関する記事を書いたので、今回は Ryzen 7 1700 単体としてのレビューをお送りしたいと思う。
Ryzen 7 1700 のスペック
Ryzen シリーズで ThreadRipper を除いて一覧表を作成してみたので、Ryzen 7 1700 にハイライトを入れる形で上記に掲載してみた。
Ryzen 7 1700 は Ryzen 7 シリーズの中では唯一モデル名に “X” が付かないモデルになる。これは XFR による動作クロック上昇が X 付きモデルよりも小幅であるという違いに現れるのみとなる。その他相違点は動作クロックの違いとそれによる TDP の低下に留まる。
使用マシン構成
X370 GAMING PRO CARBON の BIOS はベータ版の 1.82、簡易水冷の H100i では水温連動のファン制御にて高負荷時でも 1,000~1,200rpm 程度に抑えた静音志向のセッティングとしている。
メモリの CFD W4U2400CM-8G は DDR4-2400 動作がデフォルトとなっては居るが、DDR4-2933 動作へとオーバークロックした状態としている。
評価方法
CPU という演算主体の評価を行うので、いつも通り演算性能の絡むベンチマークレギュレーションを以て性能評価とする。
レギュレーションとしては次の通り。一部にいつまでも古いベンチマークソフトを用いるのもアレなので FFXIV と PSO2 ベンチマークに関しては最新のバージョンも採用した。
- 3DMark Advanced Edition
- FF XIV HEAVENSWARD Benchmark
- FF XIV STORMBLOOD Benchmark
- DRAGONQUEST X Benchmark
- PSO2 キャラクタークリエイト体験版 Ver 2.0
- PSO2 キャラクタークリエイト体験版 EPSODE4
- CINEBENCH R15
- x265.exe (HEVC Encode)
他、消費電力測定にはおおよそ CPU の消費しうる電力をフルに出し切るため、IntelBurnTest を用いている。
全ての項目に於いて Ryzen 7 1700 の定格動作に加えて 3.6GHz と 3.9GHz にオーバークロックを行ったデータも採取している。
ベンチマークデータ
一通り筆者が採取したベンチマーク結果を以下へベンチマークソフト毎にまとめていく。
あくまで筆者環境に於いてはじき出されたスコアであるため、同一の性能を保証する物では無いと言う事に予めご了承頂ければと思う。
比較対象として前世代にあたる FX-8350 のデータも入れ込んでいるので FX シリーズから Ryzen シリーズへの進化を見て取れるかと思われる。尚、FX-8350 環境は Ryzen 環境とは CPU, メモリ, マザーボードが異なるだけとなる。
3DMark Advanced Edition
主にグラフィック性能を数値として明確に示すために用いられる 3DMark ではあるが、一部項目では CPU 性能もスコアに影響を及ぼす為、これは外せないベンチマークソフトだ。
スコアのうち Physics Score や CPU Score に注目頂きたい。
DirectX 9 相当ベースとなる Ice Storm 以外、CPU 性能を示す Physics Score、CPU Test のスコアが倍以上に跳ね上がる。処理スレッド数が倍増する事と、IPC 向上による物、そもそもメモリ周りのプラットフォームが異なる事も起因する。
そして CPU 性能が向上する事で GPU である RX470 の性能をより引き出す結果となり、Graphics Score と共に総合スコアである Score も大きく向上している。
ミドルクラスの GPU であっても FX-8350 ではその性能を引き出していなかったと言う事が手に取るように分かった。
FF XIV Benchmark
FF XIV Benchmark に於いては CPU 性能は勿論メモリのレイテンシーがスコアに影響を強く及ぼす。
比較として入れている FX-8350 環境では DDR3-1866 動作で Ryzen 7 1700 環境では DDR4-2933。ただそれだけでアドバンテージのある Ryzen 環境だが、オーバークロックをする事で更にスコアを伸ばすことも出来た。
因みに Ryzen 7 1700 でもメモリを DDR4-2400 動作とすると次のグラフよりもスコアはそれぞれ 1,000 位は下降する。
ちょっとスコアに依存する部分が特殊な感じがしないでもないが、プラットフォームが変わった事による良い影響が感じられたベンチマークソフトだった。
PSO2 Benchmark
このベンチマークに関してはほぼほぼ GPU 主体でスコアが向上する物だが、その GPU の性能を引き出すための CPU も性能が向上すれば更に小幅なスコア向上を確認出来る。
低負荷なプリセットではスコアが大きく伸びるが、高負荷プリセットでは非常に小幅な向上と。
尚、EPISODE4 版に関しては FX-8350 環境時には実行した事がないので割愛している。
注意事項としてこの PSO2 系のベンチマークソフトは Radeon 系 GPU を使用しているとき、ドライバーとして Crimson Software 17.7.2 を使っていると起動が出来ない。
このせいで Crimson Software を 17.7.1 に戻して全部ベンチを取り直しするハメにもなった…… なんて事もあったりなかったり。
DRAGON QUEST X Benchmark
DQX ベンチはゲーム自体がそもそも軽量級である為、負荷自体は低め。それ故に CPU の性能向上によるスコアの向上も中程度の伸びが全体的に見ることが出来た。
HEVC エンコード
PT2 で録画した TV 番組を Avisynth 経由で x265.exe を用いた HEVC エンコードを行った。
動画のエンコードは日常的に行っているので、筆者個人としてはここがかなり大きなポイントである。
HEVC エンコードは H.264 エンコードと比較すると演算処理が非常に重く、ソースとの律速なエンコードとなると中々に厳しい物があったが、3.9GHz までオーバークロックすると 47.7fps にも達し、23.976fps で再生させるソースと比べるとおおよそ 2 倍速でエンコードが出来た。これは例えば 30 分番組なら 15 分でエンコードが終わるという事だ。
圧縮の効きづらい動きが多い映像だともっと速度が下がる場合もあるから、一概に同じ速度が出るとも言えないのだがエンコード速度としては圧倒的に早くなった。具体的に提示出来るデータはないが FX-8350 比で約 2 倍ほどは速い物だと感じられる。
CINEBENCH R15
マルチスレッドで CG をレンダリングするベンチマークソフト。Ryzen の登場からは CINEBENCH のスコアを基準に性能が語られる事がもの凄く増えた。例に漏れず筆者も計測した。
Ryzen 7 1700 定格動作であっても 1,400 を軽く越えた 1,436cb を示し、3.9GHz ともなると 1,720cb と圧巻の 1,700 越えである。
グラフに入れていないが、FX-8350 の時は 4.5GHz までオーバークロックをしても 697 というスコアだった。Ryzen 7 1700 はそう考えると末恐ろしいスコアをはじき出すと分かる。
消費電力とワットパフォーマンスの算出
過去に取得したデータで FX-8350 との比較用と Ryzen 7 1700 単体で新たに超高負荷を与えた場合の 2 種類のデータをまとめた。
実用範囲に於ける消費電力
次に示す消費電力のデータが想定しているオペレーションはゲームプレイ時と演算処理、動画のエンコードとなり、システム全体の消費電力になる。
動画のエンコードに関しては演算処理と被る部分もあるが裏で GPU を使用するフィルタも動作しているので別項とした。
3DMark の消費電力を見るとゲームプレイ中の消費電力おおよそ近い物があり、軽量なゲームであればそれ以下の電力で済むだろう。
Prime95 はデフォルトプリセットのまま実行しているので負荷としては CPU 100% に貼り付きこそするが、そう大きな負荷でもない。
Ryzen 7 1700 が消費しうる消費電力
オーバークロック時のストレステストにも用いている IntelBurnTest のプリセット VeryHigh 実行時の消費電力、CPU 温度 (Tdie) を次の様にまとめた。
Ryzen 7 1700 の動作クロックは定格と 3.6~3.9GHz を 100MHz 刻みとした全 5 パターンとなる。
所謂 Linpack 系の演算をさせることで負荷をかけるストレステストを行うためのソフトなので Prime95 や OCCT よりも負荷は高いと思っている。現に Prime95 の消費電力よりも大幅に上昇している事から分かるだろうかなと。
発熱に関しては H100i のファン回転数を冷却重視にすればもっと抑えることも可能だが、常用設定による温度変化を見たかったのでファン制御は緩いままとした。CorsairLink のプリセット Quiet よりも下げているので若干厳しめの温度ではあるが Tjmax 75℃ よりも下に抑えられているのでまぁ大丈夫かなと思う。
更にワットパフォーマンスを数値として算出する。若干変則的な算出方法だが IntelBurnTest で測定した Ryzen 7 1700 が消費しうる消費電力で CINEBENCH のスコアを割り、1W あたりの CINEBENCH スコアを出すなんて事をしてみた。
単純にワットパフォーマンスを重視するのであれば定格動作が最も優れ、クロックが上昇する毎に低下していく。
定格動作以下にまでクロックを下げて行くともっと良い値が出そうな気もするがダウンクロックはやらない主義だからそこは未検証領域である。
演算性能も向上させ、尚かつ適当な消費電力に抑えたいのであれば 3.6GHz 辺りで常用が良いと思う。逆に消費電力は気にしないからとにかく性能を―― と言うのであれば常用可能なクロック上限まで引っ張ると言う使い方になるかなと。
とは言えオーバークロックには必ずリスクが伴うので相応の知識と覚悟を持って挑むべきだろうから、良く分からないのであれば無理してオーバークロックをせずとも定格動作で十分なパフォーマンスを示してくれるだろう。
尚、オーバークロックに関しては 3.6GHz 以下の設定であれば定格動作の方が良好な場合が多い。
それは定格動作であればブーストで 3.7GHz まで上昇する事もあるし、XFR が発動すれば最大 3.75GHz までクロックが伸びる。これによりシングルスレッディングな処理に於いては逆にオーバークロックを行うことで固定化された動作クロックの方が下回るので、性能は低下してしまう事になる。
この辺りは主体となる処理内容に応じて見極めていくべきポイントでもある。
おわりに
Ryzen シリーズでもハイエンドに位置する Ryzen 7 1700 の性能はシングルスレッド性能もさることながら、8 コア 16 スレッドによる圧倒的なマルチスレッド処理性能にただ驚かされるばかりとなった。
数世代前とはいえ Intel の 10 万円オーバークラスの性能とタメを張る CPU が現実的な範囲で入手出来ると言うのだからコストパフォーマンスにもとても優れている。
以前 Ryzen 5 1600 のレビュー時にも同じ様な事を書いた気がするが、FX-8350 でも 4 年以上戦ってきたので Ryzen 7 1700 でも同様に 5 年は十分戦っていける CPU と断言出来る。
長年待った見返りとしては十分過ぎる性能だろう。
謝辞
本レビューで使用した Ryzen 7 1700 は日本 AMD からご厚意によりご提供頂いた物となる。
改めてここに厚く御礼申し上げます。
コメント
こんにちは、サンタと申します。ものすごく貴重な資料でした。ありがとうございます。もしよろしければ教えていただけたら嬉しいです。
1.ブーストでシングルコア3.7Gが発動されるのは、定格で使用したときのみなのでしょうか?
2.3.6GにOCをすると、最低クロックも3.6Gに張り付いてしまいます。定格のときですと、1.5Ghとかに下がるのですが、これは仕方がないことなのでしょうか?
教えていただけましたらすごく嬉しいです。
失礼いたします。
コメントありがとうございます。
「1.」のブーストに関しては定格で使用した時のみになります。これは OC してしまうと CPB や XFR が動作しなくなるためです。
「2.」の OC 時動作クロックに関してはコントロールパネルにある「電源オプション以下詳細設定にある「プロセッサの電源管理 -> 最小のプロセッサの状態」を 0% などに下げてみたり、場合によっては UEFI より Cool’n Quiet を有効化してみたりすると OC 時に於いてもクロックの遷移が見られる場合もありますが、マザーボードや BIOS のバージョンによって動作はまちまちだと思われます。
個人的には OC 中にクロックが落ちるようにしても消費電力に大きな差が見られなかったので、安定性を考えてクロックは動かない様な使い方をしております。
何かのお役に立てればこれ幸いです。