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はじめに
2019/07/07 にローンチされた Ryzen™ 3000 Series の中からずっと欲しかった 3700X をようやく購入する事が出来た。
無事にメインマシンを組み替えて各種チューニングとベンチマークテストも完了したので、結構出遅れてしまったが AMD Ryzen™ 7 3700X のレビューを行っていきたいと思う。
AMD Ryzen™ 7 3700X のスペック
Zen2 コアアーキテクチャ採用、開発コード名 Matisse、製品名 AMD Ryzen™ 7 3700X の基本スペックは次の表の通り。
CPU 動作クロックは 3.6GHz、最大 4.4GHz までブーストする。コア数は 8。SMT により 16 スレッドの処理が可能。
それでいて TDP は 65W となっており、万人向けの非常に扱いやすいプロセッサとなっている。
自動オーバークロック機能として CPB ((Core Performance Boost )), XFR2 (( eXtended Frequency Range 2))、プロセッサが使用可能な電力上限を変更することでオーバークロックを行う PBO2 ((Precision Boost Override 2)) が存在する。
また、AMD X570 チップセットと併用する事でコンシューマ向けの PC に対し初めて PCIe® 4.0 を提供したプロセッサ (( Zen2 コアアーキテクチャ共通 )) でもある。
パッケージ及び外観
パッケージデザインのベースは初代 Ryzen™ と大きく変わらないが背景一色ではなくなっていた。
CPU 本体が収められているパッケージ自体は小さい。エンブレムも付属している。
ヒートスプレッダ側の眺望。細かな変化としては 1 番ピンを示すマーカーのサイズが少し小さくなっていた。
今までの Ryzen™ と同じく SocketAM4 プラットフォームだけあってピン配置に変更は無い。
同梱の CPU クーラーは Wraith Prism という名称の代物。付属のクーラーとしては非常に高性能な部類に入る物と耳にする。
筆者は付属クーラーを使わない主義なので今回も未使用となっている。
塗りすぎと評判のグリス。ぱっと見でその厚みを認識出来る位に塗られている。
手持ちのサードパーティ製 CPU グリスがあるのならスッポンしてしまうリスクを多少抑えるため、塗り直して使用した方が良いかも知れない。
ベンチマークのレギュレーションと環境
おおよそ当ブログで定番的に使用している 3DMark、Cinebench R15 へ新たに Cinebench R20 を加えつつ HEVC エンコードと FFXIV STORMBLOOD を用いて性能を見て行きたいと思う。
Ryzen™ 7 3700X 環境ではメモリクロック (MCLK) と Infinity-Fabric クロック (FCLK) がどの様な影響を及ぼすかも見てみたかったので、DDR4-3200 CL14 より上の DDR4-3733 CL16 にまでチューニングを施したデータも入れ込んでいる。
更に比較対象として筆者旧環境にあたる Ryzen™ 7 1700X での取得データも入れ込んで行きたい。
筆者の新生メインマシンとなる Ryzen™ 7 3700X 搭載機のスペックがこちら。
メモリ動作は DDR4-3200 CL14 (FCLK 1600MHz) と DDR4-3733 CL16 (FCLK 1866MHz) の 2 パターン。
こちらは比較対象となる Ryzen™ 7 1700X 環境時のスペック。
メモリ動作は DDR4-3200 CL14 (FCLK 1600MHz) のみの 1 パターン。
ベンチマーク結果と考察
3DMark
3DMark はグラフィック性能を見るためには最適なベンチマークソフトではあるが、Physics や CPU Test 等の項目で CPU 性能の計測も行われる。
「CPU の性能がグラフィック性能にどの様な影響を及ぼすか」という視点で見ることが出来るため、筆者がよくつかうソフトウェアだ。
FireStrike
FireStrike は DirextX 11 ベースの API で性能を測る項目。一般的にもまだまだ採用されているゲームも多い。
結果を見るに Ryzen™ 7 1700X との大きな差は当然 CPU 性能となる Physics で Ryzen™ 7 3700X は約 1.37 倍に伸びた。加えて Graphics の項目も微増ながらも増えていることから Radeon RX470 には余力があったと言うことなのかなと。
Combined の項目はグラフィックカードと CPU 演算による混合性能となるが、これはどれも誤差の範囲で横並びとなり大きな変化は無し。
また、Ryzen™ 7 3700X に於いてはメモリ速度と Infinity-Fabric 速度の向上による性能差は以前までのアーキテクチャに比べてグッとおとなしめであると感じた。ほぼ誤差の範囲内であると言ってもおかしく無いレベルに。
TimeSpy
TimeSpy は DirextX 12 ベースの API で描写されるパートとなる。
Graphics の項目が微増という傾向は FireStrike と同じだが、CPU Test の結果は大きく様変わりした。
Ryzen™ 7 1700X 比でスコアが上昇したのは当然のこと、メモリと Infinity-Fabric 速度の向上がテスト結果へ如実に反映された事が目を惹く。
Cinebench
Cinebench は CPU による演算でグラフィックをレンダリングする物なので、CPU 性能が直に反映される。
Zen コアアーキテクチャ採用の初代 Ryzen™ シリーズが登場した時からオフィシャルにも良く使われるようになった。
R15
以前はまだしも、今となっては負荷としてそう重い物でも無く、スコアのブレが大きい為に数回計測したうちの下振れでも上振れでも無さそうな無難なスコアを採用した。
予てより 2,000cb を超えてくるという情報は知っていた物の、実際目の当たりにすると「おー!」となる様な速度でレンダリングが行われてスコアが表示された。
Ryzen™ シリーズの弱点だったシングルスレッド処理性能も Zen2 コアアーキテクチャにより克服されたと見て良いレベルにまで高速化されている。
Infinity-Fabric クロックが上がるとマルチのみスコアが微増となった。一応のメモリ OC 効果はあるようで安心出来た。
R20
Cinebench R15 よりも何倍も高負荷となった新しいバージョンが Cinebench R20 となる。
スコアのブレも非常に少なく、あったとしても狭い範囲に収まるのでデータの取りやすいベンチマークテストだった。
マルチのスコアに関しては Cinebench R15 と同程度の伸び率でスコアが上昇している。凄い上振れで 1 度だけ 4,700cb を超えた時もあったけど、何かの偶然が重なっただけのようで以後は何度やってもこのくらいのスコアに落ち着いた。
シングルのスコアは R15 に比べて重み付けが軽い為、メモリ OC によるスコア上昇が見て取れた。
FinalFantasy XIV STORMBLOOD
FinalFantasy オフィシャルベンチマークとなる。
動作設定は 1920x1080 フルスクリーン最高設定。
このベンチマークは CPU やグラフィックカードの性能は勿論、メモリのレイテンシまでもが大きく関わる物だけにメモリを OC した際にもスコアが伸びてくれた。
HEVC エンコード速度
この HEVC エンコードに於いては 3 つのデータは当然だがどれも同一ソースで、適用している Avisynth のフィルタも何もかも同一としている。
筆者はほぼ「エンコード速度の向上」を目的としていた為、このデータ取りが非常に楽しみだった。
パラメータ :
--input-depth 8 --output-depth 10 --aq-mode 3 --aq-strength 0.6 --sar 4:3 --colorprim bt709 --transfer bt709 --colormatrix bt709
ソース解像度 : 1440x1080 23.976fps
Ryzen™ 7 3700X は 1700X と比べて消費電力が少し抑えられつつも、エンコード速度が 7fps 以上も向上している。
これは 1700X までなら AVX2 の演算性能に半端な部分があって「--asm avx
」として AVX2 を無効化した方が速かった為で、AVX2 がフルに活かせるようになった 3700X の方が速くなって当然な部分もある。更にアーキテクチャの改良による IPC 向上が上乗せされた結果がこれである。
また、メモリを OC する事で約 2FPS 程速度が向上したので、エンコードを行うのであればメモリにも拘った方が良いだろう。
色々なソースをエンコードしてみる限り、20~22fps だった物が 30fps 前後でエンコード出来るようになったので、これは凄い性能向上であると言える。
消費電力と CPU 温度の計測
Zen2 コアアーキテクチャに於ける消費電力はいかがな物かなと、いつも通り IntelBurnTest というソフトウェアを用いて与えた高負荷で、純粋に CPU のみが消費する電力を調べようという物。
IntelBurnTest はプリセット VeryHigh としただけの設定を実行した。
加えて CPU と GPU を共に使用する 3DMark FireStrike 実行時の最大消費電力も計測した。実際のゲームプレイ中の最大消費電力に近い物が見て取れると思う。勿論使用するグラフィックカードによってこの値はあくまで筆者環境による物となる。
消費電力はサンワサプライ TAP-TST8 を用いて計測したシステム電力となる。
計測の結果、FireStrike 実行時の最大消費電力は Combined のパート中に記録した。グラフィックカードも併用したある程度の負荷では 1700X も 3700X もおおよそ横並びの消費電力だった。
逆に IntelBurnTest による高負荷時、CPU 単体が消費しうる電力は 179W と 1700X よりも低くなった。
そしてメモリを OC した事により +4W 増加となったが、これは純粋にメモリの消費電力が乗っかっただけだろう。
というのも Zen2 コアアーキテクチャでは電力制御のパラメータとして PPT (( Package Power Tracking )) という物があるのだが、これを絶対に超えないような制御になっている為、筆者環境で CPU が高負荷状態の場合、システム電力として 179W 以上になるのは他のパーツの電力が乗っかっているだけという事が言える為だ。
この辺は追々別記事として何か書ければなと思う所。
続いて CPU の発熱についてだが、これもまた IntelBurnTest を用いた。プリセット VeryHigh が完了した時、HWiNFO というモニタリングソフトが記録した CPU (Tctl/Tdie) の最大値を拾っている。
CPU の冷却には簡易水冷となる Corsair H100i を使用している。
消費電力こそ Ryzen™ 7 3700X の方が下がってはいても温度の方はグッと上昇している。
Zen2 コアがどう言った温度の計測方法を行い、どの様にレポートしているか分からないし、そもそもこの温度が正しいのかという確証は無いが Tjmax が 1700X 比で +20 度程となる 95 度に設定されているので、ピークでも Tjmax -20 度と考えればまぁまぁ妥当なラインだろうと思われる。
また、メモリを OC した後の計測では室温に変化が無くてもピーク温度が下がっている。ちょっと良く分からない状態だった。その後数度の計測を行ったが、ほぼ同じ傾向だったので上記グラフの値で正しいのだろう。
ちなみに IDLE 時であっても CPU 温度が激しく動くので、IDLE で 5 分放置したあとに HWiNFO の Average 項目を見てみると 40.2 度となっていた。常用アプリを起動してバックグラウンドタスクがあれやこれやと動いている状態だと放って置いても 49.2 度という値になっていた。
温度が高めに出ることで驚くこともあると思うが、大体どこを調べてもこんなもんだったので「そう言う物なんだな」で納得するほか無い。
使用感
筆者は Ryzen™ 7 1700X からのアップグレードになるので、どうしてもその時との比較になってしまうがそれでも動作の機敏さを感じることが出来た。
Zen2 コアアーキテクチャになってからはメモリの動作速度向上が今までよりも大きく狙えるので、スイートスポットとされる DDR4-3733 動作にまで OC し、メモリのサブタイミングやら細かいパラメータのチューニングを施したところ更にキビキビとベンチマークでは良く分からないような体感出来るレスポンスの向上が見られた。
CPU 自体は定格動作としつつ、メモリのみを OC して高速化を狙った方が冷却面を含め運用も楽になるかなと思うところ。
特に CPU は CPB + XFR2 により最大 4.4GHz 近くまで上昇するので、それ以下までの OC となるとシングルスレッド性能が逆に落ちてしまう。かといって 4.4GHz で常用とかちょっと所では無い位に厳しい物があると思うので。
現状、チューニングを済ませたメインマシンは余りにもサクサク過ぎるので、今までなんとも思っていなかった Ryzen™ 5 2400G のサブマシンがモッサリ感じる様になってしまった。相対的な差を如実に感じてしまうという……
おわりに
Ryzen™ 7 3700X は「これじゃ売れて当然だ」と感じるレベルの完成度。
弱点だったシングルスレッド性能は克服されているし、マルチスレッド処理も向上して更に高速化。それでいて消費電力は気にならないレベルで抑えられ扱いやすい。
ここ約一週間ほど使用して来て弱点らしき弱点を見つけられ無かったので完成度は非常に高いプロセッサであると考えている。
Zen2 コアアーキテクチャ強しである。
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